インプラントの傾斜埋入とは?治療方法やメリット・デメリットを解説
2026/10/20
こんにちは、大田区中央(池上・大森)の歯医者、谷歯科クリニックです。
あごの骨に人工歯根を埋め込むインプラント治療では、骨の量が少ない場合に骨造成手術をはじめとした対策をとる必要があります。
その対策の一つである傾斜埋入は、骨造成を行わずにインプラント治療をするための方法です。
今回は、インプラントの傾斜埋入の内容やメリットとデメリット、適応症例について解説します。
傾斜埋入とは
傾斜埋入とは、インプラント体を骨に対して斜めの角度で埋入することです。
通常のインプラント治療では、インプラントは骨に対してできるだけ垂直に埋入されます。これは、噛む力は垂直方向にかかるため、垂直に埋入したほうが力学的に適しているからです。
しかし、骨の形態や量によっては、垂直に埋入することが困難な場合があります。
例えば、上顎の奥歯の部分には上顎洞という鼻腔につながる空洞があり、この空洞が大きい場合、垂直にインプラントを埋入すると上顎洞を突き抜けてしまいます。
また、下顎の奥歯の部分には下歯槽神経という太い神経が走っており、垂直に埋入すると神経を損傷するリスクがあります。
このような場合に、インプラントを斜めに埋入することで、上顎洞や神経を避けながら、骨の厚みのある部分にインプラントを固定するのが傾斜埋入です。
オールオン4と傾斜埋入
傾斜埋入が主に活用されるのが、4本のインプラントで片顎全体の歯を支えるオールオン4においてです。
オールオン4では、前方に2本のインプラントを垂直に埋入し、後方に2本のインプラントを傾斜埋入します。後方のインプラントを傾斜埋入することで、上顎洞や神経を避けながら、長いインプラントを埋入できます。
傾斜埋入のメリット
傾斜埋入には、患者さんの負担を大幅に軽減できるいくつかのメリットがあります。
骨造成の回避
傾斜埋入のメリットは、骨造成手術を回避できる可能性があることです。
骨が不足している場合に行われるサイナスリフトやGBRなどの骨造成手術には、患者さんの身体的負担が大きいことや、腫れや痛みが強いこと、治療期間が延びることなど、いくつかのデメリットがあります。
傾斜埋入を活用することで、これらの骨造成手術を回避でき、患者さんの負担が軽減されます。
治療期間の短縮
治療期間を短縮できることも傾斜埋入のメリットです。
骨造成を行う場合、最終的なかぶせ物が入るまで一年から一年半程度かかることもめずらしくありません。
一方、傾斜埋入を使用する場合は骨造成の必要がないため、インプラント埋入手術を一回で完了できます。インプラントが骨と結合するまでの期間は必要ですが、骨造成の期間が省略されるため、トータルでも半年程度で治療が終わることが多く、治療期間の短縮が可能です。
少ないインプラント本数で対応可能
傾斜埋入を活用することで、少ないインプラント本数で多くの歯を支えることが可能になります。
従来の方法で全顎的なインプラント治療を行う場合、片顎で10本から14本のインプラントが必要なため、手術も大がかりで、費用負担も大きくなっていました。
オールオン4では、傾斜埋入を活用することで、4本のインプラントで片顎全体の歯を支えることができます。インプラント本数が少ない分、手術の侵襲が少なく、患者さんの負担が軽減されています。
傾斜埋入のデメリット
多くのメリットがある一方で、傾斜埋入ならではの注意点や構造上の課題も存在します。
力学的な課題
インプラントを斜めに埋入すると、噛む力が垂直方向ではなく、斜めにかかります。
力が斜めにかかると、インプラントには垂直方向の力だけでなく、横方向の力も加わります。この横方向の力を側方力といい、側方力が過度にかかると、インプラント周囲の骨に過度な負担がかかり、骨吸収が進行するリスクがあります。
また、インプラントの上部構造の破損のリスクも高まります。
技術と経験が必要
傾斜埋入は、技術と経験を必要とする治療法です。
術前の診断と治療計画がとても重要であり、歯科用CTのデータを用いて、骨の形態や上顎洞、神経の位置を三次元的に把握する必要があります。
また手術時には、計画通りの位置と角度にインプラントを埋入する技術が求められます。
傾斜埋入が適しているケースと適さないケース
傾斜埋入が適応となるのは、上顎の奥歯の部分で、上顎洞が大きく骨の高さが不足している場合や、下顎の奥歯の部分で、下歯槽神経に近接している場合です。また、多数歯欠損や無歯顎で、骨造成を避けたい場合にも適しています。
一方、骨の質によっては、傾斜埋入しても十分な初期固定が得られないことがあります。
また、噛み合わせの力が強い方や、歯ぎしりが激しい方は、傾斜埋入したインプラントに過度な負担がかかるリスクがあります。このような場合の傾斜埋入にはリスクが伴うため、他の治療法を検討する必要があります。
傾斜埋入を行うインプラント治療の費用
傾斜埋入を含むインプラント治療の費用は、オールオン4の場合で、片顎で200万円から400万円程度です。
自由診療のため、歯科医院によっての価格差が大きいことが特徴です。
歯科医院を選ぶ際には、費用だけでなく、治療の質や歯科医師の経験、設備なども考慮して後悔のない選択をするようにしましょう。
歯科医院選びのポイント
傾斜埋入は技術を要するため、経験を持つ歯科医師のもとで治療を受けることが失敗を防ぐことにつながります。
設備面では、歯科用CTやコンピュータシミュレーションシステム、サージカルガイドなどの機器・システムが導入されているかを確認しましょう。これらの設備は、傾斜埋入のリスクを抑えるために不可欠です。
またカウンセリングでは、治療方針や使用するインプラントのメーカー、上部構造の材料、費用、保証制度などについて詳しく説明してくれるかどうかを確認しましょう。質問に対して丁寧に答えてくれるか、リスクやデメリットについても正直に説明してくれるかどうかもポイントです。
まとめ
インプラントの傾斜埋入は、骨の量が不足している症例でも、骨造成を回避してインプラント治療を可能にする技術です。
インプラントを斜めに埋入することで、上顎洞や神経を避けながら、骨の厚い部分に固定できます。
一方、力学的な課題もあり、側方力による骨吸収のリスクや上部構造の破損のリスクがあります。また、技術と経験が必要であり、すべての症例に適用できるわけではありません。
傾斜埋入の経験を持つ歯科医師にじっくり話を聞き、納得して治療を受けるようにしましょう。
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